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Column Vol.25
Yasuhisa Shimono
 アスリートのキャリアトランジション

下農 裕久

筑波大学大学院 体育研究科 体育心理学研究室
筑波大学ラグビー部トレーナー
ラグビーU-19日本代表トレーナー(U19アジアラグビーフットボール大会)
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『セカンドキャリア』という言葉が、テレビや新聞・雑誌などのマスメディアを賑わすようになったのはいつからでしょう??おそらく、Jリーグキャリアサポートセンターが開設された2002年頃からではないでしょうか。Jリーグは900名程の選手がJ1とJ2合わせて在籍しており、毎年100名程の選手が新加入してきては、同程度の100名程度がチームから離れていく、という厳しい世界です。しかも、驚いたのは登録抹消選手の平均年齢は、まだまだ働き盛りと思われる26歳なのです。その中の5割程の選手は、現役を引退し、新たな道を歩むことになるそうです1)。厳しいプロスポーツの現実を垣間見ます。『セカンドキャリア』とはその新しい道・人生のことを指します。プロスポーツ選手の場合は『プロスポーツ選手引退後の人生』ということになります。このような解釈では不十分かもしれません。しかし、日本ではまだ『セカンドキャリア』に関する研究も少なく、言葉の定義も曖昧なので、ご了承ください。『セカンドキャリア』と同じような意味の言葉に『キャリアトランジション』という言葉があります。トランジション(transition)とは「移行・変遷・過渡期」などと訳されます。「人生における様々な移行の場面」という風に解釈が可能です。具体的には、高校から大学への進学や競技の引退、怪我、メンバー落ちなどもトランジションの一種だと言えるでしょう。人は生きていく上で様々な「役割」を担います。大学生アスリートはもちろん「競技選手」という役割を担いますし、「大学生」や「家族の一員」「友達」「先輩」などの役割を担うことになるでしょう。トランジションによって、その役割の変化が起こることになります。大事なことはその「役割の変化」にうまく対応することです。その変化にうまく対応するには、人生における様々なトランジションに対して、事前の準備(キャリアプラン)を十分にしておくことが必要です。トランジションにも「予測可能なトランジション」と「予測不可能なトランジション」がありますが、前者に対しては準備が可能です。例えば、大学生アスリートであれば最終学年になれば、自ずと大きなトランジションを迎えることになります。私は多くの大学生アスリートが、そのようなトランジションに対しての準備は不十分なために、苦労していたケースをたくさん見ました。そのような苦労や拡散は人生の中で非常に大事でそれを乗り越えると、人格的な成長も得ることができます。しかし、そのためにもしっかりとした準備が必要なのです。トランジションに対する準備としては、(1)予測可能なトランジションを把握することが大事です。そして、(2)適切な情報を集めることです。自分に関しての情報と、社会の情報があります。自分をしっかりと見つめ、「自分は何がしたいのか?」を明らかにしていくことが必要です。(3)自分の選択肢をよく考えることです。「自分のしたいこと」は実現可能かをよく検討することが必要です。そして、(4)具体的な方法を考えて実行していくことです2)。自分のニーズや選択しうる他の可能性も十分に検討することが必要です。これは、キャリアプランの一部分ではありますが、どこか頭の片隅に置いておくとよいかと思います。『セカンドキャリア』と聞くと、競技引退後の人生、という風に単純に考えてしまいますが、それも『人生』という長いキャリアの中での一つのトランジションです。つまり、十分に予測が可能であり、事前の準備が可能なのです。
最近では、Jリーグを始めとしてJOCや他の競技団体でもキャリアトランジションに関する教育やアナウンスが行われているようです。若い世代から、『キャリアトランジション』に関する教育・情報を受けて、自分で主体的な人生を過ごしていく事が、現在のアスリートには必要なように思われます。

参考・引用文献
1)Jリーグキャリアサポートセンター ウェブサイト http://www.j-league.or.jp/csc/
2)A.プティパ:田中ウルヴェ京,重野弘三郎訳(2005) スポーツ選手のためのキャリアプランニング.大修館書店:東京.
3)豊田則成,中込四郎.(2000) 競技引退に伴って体験されるアスリートのアイデンティティ再体制化の検討:体育学研究.45:315-332.




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