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Column Vol.3
Ichiro Kitano

 アメリカでは、スポーツ選手の健康と安全に関する領域のスペシャリストとして、アスレティックトレーナーが存在します。アスレティックトレーナーは高校、大学、プロスポーツ、病院、フィットネスクラブなど様々なスポーツ現場で活躍し、重要な役割を担っています。

今回のコラムは大学卒業後渡米し大学院でアスレティックトレーニング学を学んでいる北野一郎さんに大学でのプログラムなどについて紹介してもらいました。

 学生トレーナー in ニューハンプシャー


●北野一郎
プリマス州立大学大学院修士課程在学中
Plymouth State College
Master of Education in Athletic Training

 私は大阪体育大学を卒業後、アメリカに渡り大学院でアスレティックトレーニング学を学んでいます。大学院では研究とともに各競技チーム(現在はアイスホッケー)において学生トレーナーとして実習を行っています。

アメリカ東海岸のNew England 地方の1つNew Hampshire州のちょうど真中に大学は位置します。 大学スポーツは、Division III に属し、アメリカンフットボール、 男女サッカー、女子バレー、男女テニス、アイスホッケー、 男女バスケ、レスリング、ベースボール、ソフトボール、男女ラクロス、 スキー、水泳があります。特にフィールドホッケー、 女子ラクロスは強いです。

アメリカには、アスレティックトレーナーになるためのプログラムを持った大学や大学院があります。大学院でもEntry Level とAdvanced Levelがあります。Entry Levelの大学院は基本的に大学にあるプログラム、いわゆるAthletic Trainingの基礎になる授業を履修し、それと同時進行で大学院での専攻しているMasterのプログラムをこなさなければいけません(大学院によって多少異なると思います)。

それ以外に、プログラムはなくても大学で、NATAの試験に必要な授業を履修し、インターンシップと言う形でNATA公認アスレティックトレーナー(Athletic Trainer, Certified 以下ATC)のもとで実習をこなせば、試験は受ける事ができます。ただし、インターンシップでのNATAの試験を受ける方法は、今年いっぱいで終了するはずなので、これからはATCになりたいのであれば、プログラムを持った大学か大学院に進むしか道はありません。Advanced Levelのプログラムを持った大学院には、すでにATCであるか、NATAの試験を受けることができる生徒、つまりプログラムを終了したかインターンシップを終了しているという生徒が進学できます。

大学によって異なりますが、プログラムはだいたい2年生から始まります。そのプログラムに入るために、どの大学でも1年生はアスレティックトレーニングを勉強するに当たって必要な一般教養(解剖学、生理学 etc)を履修しなければいけません。それと同時に、私の大学では100時間のオブザベーション(実習見学、簡単な仕事の手伝いやその実習での評価)をこなさなければなりません。

毎年、30人以上のFreshmen(1年生)がプログラムに入ろうと2年生になる時に応募します。うちの大学は、毎年7〜9人くらいがSophomore(2年生)になってプログラムに入り、実習できるようになります。私の大学の場合、選考内容として、面接、1年生の時の成績、なぜアスレティックトレーニングを専攻したいのかを書いた小論文(レターって意味で)を提出した後に、うちの先生達が選考するミーティングをします。そして、合格者が決まります。

大学に入ったからといって、勉強や実習ができるわけではないのが、日本と違った厳しさかもしれません。Sophomore(2年)、Junior(3年生)と学年が上がるに連れて、アスレティックトレーニングに関する様々なクラスを履修していかなければなりません。もちろん、学生トレーナーとして実習する前には、Orthopedic Assessment と言って、怪我の評価をするクラスを最低、履修しておく必要があります。

フットボールフィールド
日本ではこれはないなぁと言うのは、怪我をした選手への対応の仕方。例えば、アメリカンフットボールの選手が試合中にタックルされて、脳震盪 (Concussion) で動けなくて倒れているとします。それに対して、どう対応するのか。もし意識があれば、何をチェックして、何も問題がなければグランド外に運んで、そのあとにはどうするのかとか、そう言った細かなことは、まず日本の大学レベルで教えてはいないと思います。確かにそのような授業は日本でもあるわけですが、スポーツ現場で起こりうる様々な局面を想定し、それに対応できるようにトレーニングされます。

それ以外にも、日本の大学では学べないことはたくさんあり書ききれません。でも、こちらの大学で、これは勉強してないなぁと思ったのは、パートナー・ストレッチの仕方です。現場にでれば、選手はストレッチしてくれと頼んできます。アメリカ人で、普段からストレッチをする事に慣れてない学生トレーナーは、できない生徒がほとんどです。僕の場合は、大阪体育大学の野球部の時に、学生トレーナーで選手に対してストレッチをしていたので問題はないですが、それでも大学の授業の中でも、習った覚えはないです。

私の大学には大学院と大学の両方にアスレティックトレーニングプログラムがあるため、Student Athletic Trainers といわれる学生トレーナーは30人くらいいます。そのため、各スポーツへの割り当てで、2人でパートナーを組んで活動します。上級生と下級生の組み合わせでパートナーは組まれます。もちろん、スーパーバイザーと呼ばれる、指導監督するATCと一緒に活動します。フットボールの場合に限り、うちの大学は3〜4人です。

シーズン初めは毎回のように、ペーパーワークで始まります。各スポーツの監督から渡されるRoster (選手名簿)に沿って、Training Room(※)でも同じ物を作り、各選手が必要な書類を提出しているか確認します。提出されなければならない物がそろってない場合は、その選手の練習への許可はおりません。日本との違いは、アメリカではアスリートは Insurance と言って、自分に対する保険をかけていないといけません。日本の場合は保険証を普通は持っているので問題はないのですが、アメリカにはそれはないため、保険をかけていないといけないのです。そのコピーは常時、練習中、試合中、遠征先で、すぐに出せるように携帯しています。

レギュラーシーズンになれば試合も始まり、もちろん怪我も増えてきます。怪我をすれば、もちろんその怪我が何であるか、評価をしなければいけません。各スーパーバイザーによって異なりますが、基本的には学生トレーナーに任せて、評価し終わった後でスーパーバイザーに報告します。スーパーバイザーがもう一度評価し直しますが、基本的にうちの大学では学生トレーナーに任せられることが多いです。次にそれをAthletic Training Roomにあるパソコンに入っているソフトを使い、その怪我の評価を全て文章にしないといけません。書類にして残すと言うことは非常に重要です。あとから見たトレーナー達がその怪我が何であったのかを確認する際、保険会社に提出しないといけない時、NCAAに提出する時などなど様々です。

私の大学には週2,3回メディカルドクターが来るため、その都度トレーナーからの評価結果をドクターに伝え、診断してもらうこともあります。担当スポーツの学生トレーナーがドクターに伝えることがほとんどです。それから、怪我をした選手にはリハビリをさせます。

 
アスレティックトレーニングルームの一室
シーズンが終われば、またペーパーワークです。シーズン中に起こった怪我のレポートを終わらせるのと、どういった怪我の割合が多かったのかなど、そう言った仕事です。それ以外にはシーズン中に持ち運びしていた書類の整理整頓、トレーナーキットの整理整頓等。各学期の最後にスタッフとその学期にレギュラーシーズンのスポーツを担当した学生トレーナーのミーティングがあります。そこで、どういったシーズンだったのか、怪我はどんなのがあって、そのときの様子、リハビリなど情報交換をします。それで一応終了です。

日本の場合、スポーツにシーズン制はないため、基本的に1年中練習します。アメリカの場合は、シーズン制があるため一定期間しか、練習も試合もNCAAのルールできないようになっています。もちろん、これがあるため、学生トレーナーも上手く活動できているのではないかと思います。秋にはハレーボール、フィールドホッケーサッカー、アメリカンフットボール、冬にはアイスホッケー、バスケットボール、レスリング、春には野球、ラクロス、ソフトボールと言ったように、本当に様々なスポーツでトレーナー活動を行うことができます。日本で同じ事をすれば、いい迷惑になるだけかも知れませんね。都合のいい時にだけ来て、それが終われば次へ。アメリカならではのことかもしれません。

これは、自分で感じたことなのですが、スポーツにもよりますが、シーズン制にすれば怪我の数は必ず増えると思います。スキルを必要とするスポーツは特にだと思います。シーズン初めには、毎回毎回同じような怪我の繰り返し。日本のように、1年中練習すれば体は強くなると思います。ただ、メリハリはないと1年中練習すればいいと言うものでもないと思います。

今はアイスホッケーチームのトレーナーとして実習を行っていますが、春になればラクロスのトレーナーにつく事もあるかと思います。その時にはラクロスの情報をお届けしたいと思います。



※Training Room/アメリカでは、アスレティックトレーナーが活動するアスレティックトレーニングルーム(治療やリハビリテーションなどを行う部屋)のことをトレーニングルームと呼ぶことが多い。一方、日本でいうトレーニングルームすなわち筋力トレーニングを行うようなところを、ストレングスルームだとかリフティングルームだとか呼ぶことが多いようである。