Column Vol.5
Kitano Ichiro |
|
|
|
|
|
|
今回のコラムはColumn3で登場していただいた北野一郎さんです。5月に大学院を修了し、6月よりアスレティックトレーナーとしての仕事が始まるとの事です。今回はMLB(メジャー・リーグ・ベースボール)のPhiladelphia
Phillies(フィラデルフィア・フィリーズ)にインターンシップに行った際の体験談を送って頂きました。
|
2003年6月3日、待ちに待ったインターンシップが始まる日だった。前日から友達の家に泊まり、友達の家からの道順も聞いて万全。2時までに球場のExecutive
Office(関係者などしか入れない入り口)にくるようにと言われていた。友達の姉から、「高速道路が今工事中でちょっと渋滞になるかもしれない」とありがたいアドバイス。それをすべて計算して、何とか2時にはそのオフィスにたどり着いた。そこで、事情を説明すると、「Working
Media」と書かれた名札のような首からかけるようなものをもらい、このインターン期間中はそれで球場に出入りができると。初めてだったため、係りの人に連れられClub
Houseへ。 Club Houseに入ったところで、待つように言われた。Club
Houseの入り口を入ると、Phillies(フィリーズ)の歴史に残るような選手が描かれていたり、永久欠番を背番号が飾られていたり。アスレティックトレーニングルーム(以下、トレーニングルーム)に連れられ、ヘッドトレーナーを紹介してもらった。(Club
Houseとは、選手のロッカー、トレーニングルーム、ウェイトトレーニングルーム、シャワー、トイレ、エクイップメントルーム(道具係りのオフィス)などがある)Jeff
Cooper,
あだ名は苗字のCooperを短くして「ク−プ」。メジャーのトレーナー歴はもう25年以上で、選手やコーチ、みんながそう呼んでいるほど、慕われているベテランのトレーナーである。
 |
| ロッカールーム |
とりあえず、着替えのシャツを渡されて着替え、球場内を案内してくれた。普段は通ることのない球場の中。子供の頃、何か初めてプロ野球選手を見たときのように、ドキドキしながら歩いていた。ク−プは、「ここを通ってダッグアウトにいく」とかいろいろ説明してくれた。ちょうどその日から、マリナーズとの3連戦。クープは去年のメジャーと日本のオールスター戦が日本で行われたときのメジャーのトレーナーで行っていたため、マリナーズにいる日本人のトレーナー、江川さんを知っていたので、紹介してやるといわれた。ビジター用のClub
Houseへ行き、マリナーズのヘッドトレーナー、Rickとアシスタントトレーナー、Tomも紹介してもらった。もちろん、江川さんも。ちょっとしか話す時間がなかったので、挨拶程度の会話。その周りに居たピッチャーが日本語で「こんにちは」など話かけられた。さすがに3人も日本人のいるチームのため、いろいろ知っているみたいである。 それから、トレーニングルームに戻り、インターン開始。初めは特にすることもなく、トレーニングルームに来る選手に、挨拶や会話をすることのほうが多かった。さすがに僕の「イチロー」と言う名前は、この業界結構助かる。覚えてもらうのには簡単で、会話が野球の話になる。そんなこともあり、みんなにすぐ覚えてもらえた。ある選手は、「クラブハウス間違ってるぞ」とかいろいろ茶化してきたり、特にメジャーの選手だと感じないくらいのフレンドリーさ。これは日本の野球界にはないやろうなぁと思った。有名な選手でさえも、話し掛けやすい。その点で英語はいいなぁと思う。日本語よりも。
 |
| アスレティックトレーニングルーム |
初日はほとんど何もすることなく、いろいろ見たり聞いたりするのに時間を費やした。その中でも、興味を引かれたのが、2人のトレーナーが行う肩周りのストレッチ。今までに見たことがなかったし、そう言うテクニックがあることさえも知らなかった。なぜそういったテクニックでするのかも教えてもらった。ク−プは、それを僕に教えてくれるため、僕に空いてる時間を使ってストレッチをしてくれた。普段はストレッチをする側なので、特にストレッチの違いを感じることもなかったけど、このときは違った。ストレッチの後に何か肩周りがきれいにほぐれて、何かいつもと違う感覚だった。 それからは、ク−プとマーク(アシスタントトレーナー)がストレッチをするときは、できるだけ見て覚えようとメモをとったりした。さすがに見るだけでは覚えれなかった。時間を計ってみると2人とも20分くらいかけてやっている。しかも30種類くらい違う動きを。そのあとで、ク−プにストレッチをするように言われた。言われてもさすがにすぐにはできず、教えられながら途中まで。 試合開始時間が近づいてくるにしたがって、選手やコーチのクラブハウスへの出入りの回数が多くなった。トレーニングルームに入ってくる選手もその日は雨が降っていたため多かった。その日の先発は、2,3週間前にノーヒットノーランを達成したKevin
Millwood。ブレ−ブスからシーズン前にトレードになってきた選手で、チームのエース。試合前にでも、普通に話しかけてくれる。Kevinはインターン中の好きな選手の1人である。 当日は雨が降っていたため、試合開始が45分くらい遅れた。クープから試合用のジャケットをもらい、ダッグアウトへ。チームの監督のLarry
BowaとヘッドコーチのGary
Varshoに挨拶をして、試合をダッグアウトから観戦。対戦相手のマリナーズの先頭バッターはもちろん、イチロー。ダッグアウトの前にフェンスがなかったため余計に近くに感じた。こんな近くでイチローを見れるとは思っても見なかった。これは正直うれしかった。ダッグアウトは結構面白い。ちょうど座ったところが、右からスペイン語、左から英語が聞こえるような場所だった。ベネズエラ、ドミニカ、プエルトリコと言ったスペイン語圏から来る選手は、試合中でも固まって座るし、もちろん英語も話すけど、試合中でもスペイン語。スペイン語圏の選手でも英語は話せてもそんなにきれいな英語ではない。これなら、日本人でも野球できるなぁと思った。もちろん、英語を理解はしないといけないけど。
 |
| 一郎 と
ICHIRO |
試合は残念ながらPhilliesがマリナーズに3連敗。冗談で選手に「お前が来てからずっと負けてるから、明日も負けたら帰ってもらう」と言われるし。結構プレッシャーは感じる。そんな中、トレーニングルームでは毎日ストレッチの練習。ナイトゲームが7時から始まるときは、1時くらいに行ってたため、選手が来るまでに時間があった。その時間を使って、マークと練習。マークは結構物静かな性格だが、親切でいろいろ話し掛けて来たり、教えてくれたりした。それ以外は、メジャーリーグではどのチームも試合や練習前に作ってるアイスパックを作った。これは、ビニール袋で作るものとは違い、バスタオルくらいの大きさのタオルにクラッシュアイス(細かく小さい氷)を置いて、きれいに長方形になるように包む。そうすると、肩や肘にきれいに包めて、うまく巻けるという。実際、そうである。ビニール袋に氷を入れると解けて空気が入り、そのせいできれいに肘・肩をアイスすることができない。 肩のエクササイズをいろいろと紹介してもらった。個人的に収穫はあったが、チームは4連敗。5日目は雨で試合中止。最後の6日目はダブルヘッダー。最後の日に、Turk
Wendellと言う投手が「そろそろステップアップするために、俺がお前にストレッチをしてもらう」と言ってきた。もちろん、先発の投手ではない。メジャーではもう10年以上はプレーしてる選手で、メッツに居たときに日本に来たこともある。この選手が毎日トレーニングルームに1番初めに来て、エクササイズを始めたり、ストレッチを頼んで来たりする選手で、有名じゃないけどこの選手の自分を継続させると言う努力は見習うものがあった。マークが横について、もちろん間違いのないかを確認し、Turkももう少しストレッチして欲しければ言ってくれた。 ダブルヘッダーは2試合とも勝ちインターン中は2勝4敗。良くはないけど、勝ってくれたのでうれしかった。試合が終わった後に、ク−プがその試合のメンバー表をくれた。もちろん、記念の1勝目と言う意味で。その日は、試合後に移動でアナハイムまで移動のため、試合後のClub
Houseはあわただしかった。トレーニングルームももちろん、必要な荷物を詰めてバスへ。最後に、ク−プ、マークと握手をしてお礼を言った。それ以外に、1週間お世話になった選手やエクイップメントマネージャー(道具係)にも挨拶して、短くて長い6日間の夢から覚めるときがきた。本当に良い経験をすることができたのも、ク−プがこのインターンに僕を選んでくれたから。本当に感謝しています。
 |
Jeff
Cooperヘッドアスレティックトレーナー(左) Mark
Andersenアシスタントアスレティックトレーナー(右) |
|
|