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Column Vol.6
Taku Nakano

審判はスポーツ種目により形態も違い、審判が存在しないスポーツもありますが、なにかと批判の的になることが多いです。それほど審判はスポーツにとって重要な役割を担っている表れでしょう。今回は審判の育成に積極的なサッカーの審判について、現役のサッカーのコーチでもあり、日本サッカー協会公認審判員の中野卓さんに試合に臨むための準備やゲーム中に意識していることを中心に語っていただきました。ラクロスは北米、サッカーはヨーロッパ(イギリス)と発祥の地が違い、審判に対する認識が違うところも多いようですが、ラクロスの審判にも参考になることがあるのではないでしょうか。
 
 審 判
 ●中野 卓
 
大阪国際大学、龍谷大学非常勤講師
 
NPO法人ゼッセル熊取アスレチッククラブ副理事長
 
日本サッカー協会公認1級審判員


■ゲームがある日のタイムスケジュール
 試合開始時間の1時間前(日本協会主催ゲームでは2時間前)には会場に入らなければいけませんので、それに合わせて家を出ます。安全や渋滞などの面から考え公共交通機関を利用することが望まれ、自家用車の利用は極力避けます。会場に到着すると、競技会規定と当日のタイムスケジュールを確認します。通常1時間前からグランドチェックを行い、ピッチの状況や用具の設定を確認していきます。それが済むと4人の担当審判で打ち合わせを行います.。ここでは主審が中心となってお互いの仕事の確認とお願いをしていきます。フラッグを使ってのアピールの仕方や緊急事態が発生した時の4人の対応など細かく打ち合わせていきます。その後各自がウォーミングアップを行いますが、身体だけではなくココロの準備もしていかなくては行けません。試合開始の15分前には終了し、5分前には選手を集めます。そして入場、コイントス、キックオフといった手順で試合が始まります。
 試合終了後は、クールダウンをじっくりできる時もありますが、大抵の場合試合の反省会があるので、素早くシャワーを浴び4人の審判員と当日来られた審判のインスペクター(レフェリングの評価を行い、何が良くて何が悪かったかを毎回リポートする人)で試合の運営に関し話をしていきます。

審判グッズ
左上から 審判ワッペン、フェアプレーワッペン、イエローカード、レッドカード、ペン、記録用紙
コイン、笛、空気入れ、空気圧計


■ゲームに望むにあたり気をつけていること、ゲーム中気をつけていること。
 ゲーム前には担当試合の対戦を見てどのようなチームかという情報を集めます。それは実際に試合を見ることであったり、人から得られる情報であったり様々ですが、この時に先入観を持たないように気をつけています。また戦術やフォーメーションなどの情報も有益です。特にアシスタントレフリーをする際にはディフェンスラインでの駆け引きやオフェンスの動きなどを予想しておかないとスピードについて行けなかったり、ゲームを読んだうえでの判定ができません。これは主審でも同じだと思います。主審をする際、選手を集める時間(先発選手の用具のチェックなどをおこなう)から一つの戦いが始まっています。選手は今日の審判を観察しているからです。風貌や年齢、言葉使いや振るまい、いろいろなことをチェックされているように感じます。ですからここでは堂々と自信に満ちた態度で選手に接していきます。決して偉そうに振舞うことはありません。よくあたるチームではここで信頼を得られることがよくあります。もちろん前回の審判が信頼を得られるようなジャッジングであったという条件が付きますが…。
 ゲーム中は、最初の笛とともに最初のファウルを最も大切にしています。最初の笛が自信のないもの(歯切れのない、小さい音のもの)だと選手は、不信感を持ちます。また最初のファウルを見逃すと笛に説得力がなくなります。ファウルというと蹴ったり押したりといったことだけでなく、シャツを引っ張ったり審判を欺くような汚いプレーも含まれます。この見極めがうまく行くとファウルを受けた選手はもちろん、ファウルを行った選手も審判を信頼しプレーに集中していくようになります。後半の立ち上がりも同様です。
 その他、正しく説得力のある判定を行うためにプレーに近く更によい角度でプレーを見極めることを心掛けています。そのためゲーム中の運動量が落ちないように日頃のトレーニングを行っています。
 プレーヤーとの関係は近すぎず遠すぎずといった微妙な距離感を保つようにしています。近すぎると試合中お互いに緊張感が保つことができません。逆に遠すぎる時には、いつまでたっても信頼感が得られず、お互いに試合に集中することができません。そしてそのチームのキープレーヤーを探します。上手さではなくチームのシンボル的存在かどうかで判断します。このプレーヤーとの関係がゲームコントロールを容易にすることが多々あるからです。
 全般的には、最初のインプレッションを大切にレフリングすることを意識しています。「悪い」「汚い」などを感じたらそれ相応の厳しい態度で選手に接します。「フェア」なプレーがあれば(心の中で)拍手を送りますし、感謝の気持ちも述べます。あまり感情をおもてに出すことには反対だという意見を持つ方もいらっしゃるとは思いますが、現時点では非常に大切なことだと思っています。もちろんその感情はコントロールできなければいけませんが…。

■どんな審判を目指すか?
 良い試合の条件を挙げるとすれば、人それぞれ色々な意見があるとおもいますが、私は選手も審判も(観客も)すべての人がそのゲーム、ひとつひとつのプレーに集中することができる試合だと考えます。そして試合にかかわるすべての人がお互いを尊重するということです。そのためにはやはり審判は信頼されることが重要ではないでしょうか。判定、それを行うポジション、そのポジションを取るための体力、ゲームの予測(サッカーの知識)、これらを持ち合わせるために試合までの期間、良い準備をすることが今後の目標です。そしてイタリアの某審判のように絶対的な存在感も示していけたらと思います。

■制度
 現在大阪府内で審判免許を取得されている方は、以下の表のようになっております。多くの場合、各団体、連盟にチーム登録する際には帯同審判を置くことが義務付されています。その結果4級や3級の多くの方はプレーヤー(指導者)兼審判というような形で活動しています。上級を目指す3級、2級審判員は各協会所属の担当者から審判の割り当てが前月の中旬〜下旬にかけてFAXまたは郵送にて送られてきます。

(単位:人)
  2001年度 2002年度
男子 女子 男子 女子
1級 11 2 10 1
2級 70 4 70 4
3級 2640 2890
3級ユース * 71
4級 2642 1969
4級ユース 554 882
合計 5923 5897
出典:大阪サッカー協会,2002


昇級するためには、本人の意志だけではなく所属協会の推薦がなければテストは受けることができません。テストは基礎体力試験(12分完走、200m×2本、50m×2本)、ルールテスト、実技試験(実際のゲームでの審判技術)の3つから構成され、合格基準は級により設定されています。テストによっては人数的な制限が加えられている場合もあります。

審判もトレーニングは欠かせない

級により担当できる試合が制限されています。例えば昨年度2級の私が担当した試合は以下のとおりです。

(単位:試合数)
カテゴリー 主審 副審 4th 備考
Jリーグ関係 6 3 0 サテライトリーグ,練習試合
社会人 5 4 1 JFL,天皇杯,全国地域リーグ,ミニ国体,関西社会人
大学生 10 6 0 全日本大学サッカー選手権,大臣杯,関西学生
高体連、Jユース(U-18) 9 4   ミニ国体,近畿大会,高校サッカー選手権大会大阪府予選
中体連、クラブユース(U-15) 5 3 1 全国中学生大会,クラブユース

 現在、ほとんどの試合で審判料が支払われます。試合のレベルや時間によりまちまちですが、2級の担当試合では1試合当たり主審で5,000〜15,000円の審判料が支払われます。例えば関西学生サッカーリーグの主審は10,000円、副審で8,000円に交通費が別につきます。報酬の面ではサッカー協会内の審判委員会の方々の努力により、かなり改善されたと聞きます。
 Jリーグチームのほとんどの選手はプロ選手として契約しています。しかしながら審判は、プロ野球の審判のようにプロではなく、審判以外に仕事を持つアマチュアです。プロ化によりプレーの質は上がりました。それに伴い高いレフェリングスキルが必要となるわけですが、アマチュアである以上、スキル向上にも時間と労力が必要となります。そのような現状もあり、日本サッカー協会は、昨年度よりスペシャルレフリー(SR)制度を発足しました。報酬面では、月40万円の基本給と1試合20万円の手当てを合わせ、年収約1000万円の待遇となりました。現在全国で4人が認定されており、定年は50歳です。
 このように最近では審判というポジションの認識も高まっています。その分、審判自身の能力向上が求められています。選手同様、技術、体力、心理面での向上の為のトレーニングが不可欠です。年々スピード化されるゲームに対応するには特に体力的な要素が重要になります。どのようなスポーツの審判も同じだと思いますが、「いいポジション」でプレーを見ることができるかどうかが大切です。その為には、体力的な要素が求められます。日頃の健康管理や試合に向けたコンディショニング、当日のウォーミングアップ・・・ 勝つためではないにせよいいパフォーマンスを発揮するというところでは選手と変わりません。
 公認1級審判員取得に向け日々精進し、いつかヨーロッパチャンピオンズリーグやワールドカップの舞台で笛を吹きたいと思います。

オランダ・アヤックスでの研修
ヨーロッパでのコーチライセンス取得も目指す
左はコーチのマルコ・ファン・バステン(88,92年世界最優秀選手)



*男子ラクロス審判関連サイト>>> ZEBRAMEN